最近の開発で、ソフトウェアはプロトタイプであればかなり自在に“所望の形”へ持っていけると実感した。ポイントは大きく 3 つ。
- 通信の肝を押さえる
- "プログラムで解決できるか" の感覚を養う
- 入出力(I/O)を先にデザインする
1. 通信の肝を押さえる(ソケット/シリアル)
- ソケット通信(TCP/UDP): PC 間・ネットワーク越しのデータ交換に向く。Node/Python/C++ いずれでもライブラリが豊富で、非同期処理との相性が良い。
- シリアル通信(UART/USB-Serial): マイコン・計測器との接続の定番。ボーレート、パリティ、フロー制御などの設定を決め、メッセージの区切り(改行やデリミタ)を明確にするだけで一気に扱いやすくなる。
- 共通の勘所は、
- プロトコルを簡素に保つ(テキストで始め、必要ならバイナリへ)
- メッセージフォーマットを固定し、送受信のステートを明示する
- ロガーで“送った/受けた”を全て記録する
通信方式さえ抑えれば、ソフトとハードの接続は驚くほど簡単になる。
2. 最小セットで“プログラム感覚”を掴む
まずは次の 4 つだけ理解すれば十分に戦える。
- 変数: 状態を覚える箱
- 関数: 入力 → 処理 → 出力の変換装置
- ループ: 同じ処理を繰り返す
- 条件分岐: 状態に応じて分ける
これで「それはプログラムで解けるか?」の勘所が身につく。 まずは入出力を決め、関数の組み合わせで“動く最小”を作る。
3. まず入出力(I/O)をデザインする
プロトタイプを作るときは、最初に最終的な入力と出力を決める。
- 最終出力は何か?(数値、画像、合図、動作)
- どの入力から導くか?(センサー値、クリック、キーボード、API)
この“入出力”を頭の中で想像してそれを AI に伝えるだけで、必要な関数とデータ構造、通信の粒度が自然に決まる。結果として最小構成での実装が速くなる。
4. 構造化フォーマットで送る(JSON みたいな形)
“JSON”という言葉を知らなくても、内容を「分かりやすい箱」に入れて送るだけで、ソフトとハードの会話は一気に楽になる。
- ポイント
- 1 つのメッセージに「名前」と「値」をセットで入れる
- 似た情報はひとかたまり(箱)にまとめる
- どの箱が必須か(オプションか)を決める
例えば、センサーの値と装置の状態を送るとき:
{
"type": "sensor_reading",
"device": {
"id": "A-01",
"mode": "normal"
},
"data": {
"temperature_c": 23.4,
"humidity_pct": 41.2
},
"ts": 1727059200
}
同じことをバラバラの文字列で送ると、受け手は並べ替えや解釈に手間がかかる。箱(構造)に入れて送ると、受け手は「どの箱を読むか」だけを決めればよく、処理が安定する。はじめはこの 3 つの箱を意識すれば十分。
- type: これは何のメッセージか(合図)
- device: 誰から来たか、今どんな状態か(自己紹介)
- data: 中身の値(本題)
送る側・受ける側が同じ箱の名前を使っていれば、言語や実装が違っても“意思疎通”できる。まずはテキストの箱(JSON のような形)で始め、必要になったら後でバイナリに置き換えればよい。
小さく始めて、薄く積む
- 可視化(ログ)を必ず入れる。何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのか確認できる。
- 1 ステップずつ期待する入出力が満たせたか検証する
“最小で動かす → 目で見る → 次を足す”の繰り返しが、プロトタイピングの正攻法だと改めて感じた。
結論:通信方式の理解、最小のプログラミング感覚、そして入出力設計。この 3 点が揃えば、プロトタイプは思ったより簡単に形になる。